「漫画を描いてみたけれど、なんだか画面がスカスカして見える」「プロのような立体感が出ない……」と悩んでいませんか?その悩みを解決する大きな鍵が「漫画トーン」です。
モノクロの漫画において、トーンは単なる「グレーの色付け」以上の役割を持っています。光と影を操り、キャラクターの感情を代弁し、時には読者の視線を誘導する、魔法のようなツールなんです。
今回は、初心者の方が迷いがちな漫画トーンの意味や基本スペック、そしてプロも実践している効果的な使い方や実例をたっぷりと解説していきます。この記事を読み終える頃には、あなたの原稿が見違えるほど華やかになるはずですよ!
漫画トーンの意味と役割を再確認しよう
そもそも「漫画トーン(スクリーントーン)」とは、規則正しく並んだドット(網点)や模様によって、モノクロの世界に「中間色」を生み出す画材のことです。
モノクロ印刷は、基本的に「黒いインクがあるかないか」の2択しかありません。しかし、非常に細かい黒い点を密集させ、視覚の錯覚を利用することで、私たちの目にはそれが「グレー」として認識されます。
漫画におけるトーンの主な役割は、大きく分けて3つあります。
まずは「色の表現」です。金髪を薄いグレーで表現したり、赤い服を濃いグレーで表現したりと、モノクロ画面に色彩の概念を持ち込みます。
次に「立体感と質感の演出」です。キャラクターの顔に影を落としたり、金属のツヤを表現したりすることで、平面的な絵に奥行きが生まれます。
最後に「心理描写」です。キャラが落ち込んでいる時のどんよりした空気や、恋に落ちた時のキラキラした背景など、目に見えない感情を視覚化する効果があります。
失敗しないための基本スペック!線数と濃度の選び方
トーンを選ぶ際に必ず目にする「線数(L)」と「濃度(%)」という数字。ここでつまずく人は多いですが、ルールさえ覚えれば簡単です。
1. 線数(L)は「きめの細かさ」
1インチの幅にどれだけ点が並んでいるかを示します。数字が大きくなるほど、ドットは小さく繊細になります。
- 60L(線):最も標準的な数値です。少年漫画や青年漫画で広く使われており、迷ったらこれを選べば間違いありません。
- 50L以下:ドットが大きく、少しレトロな雰囲気やポップな印象を与えたい時に使います。
- 65L以上:少女漫画や非常に繊細なイラストに向いています。あまりに細かすぎると、印刷した時にグレーの面に見えてしまい、ドット感がなくなります。
2. 濃度(%)は「色の濃さ」
その面積の中に、どれだけ黒いインクが占めているかを示します。
- 5〜15%:肌の影や、非常に明るい場所に使います。
- 20〜30%:服の色や、標準的な影の表現に最適です。
- 50%以上:夜のシーンや、黒に近い濃い色の服に使います。
デジタルで描くならCLIP STUDIO PAINTのようなソフトを使うと、これらの数値を後から自由に変更できるので非常に便利ですよ。
【実例別】画面がグッと引き締まる効果的な使い方
トーンをどこに貼ればいいか迷った時は、以下の「鉄板パターン」を参考にしてみてください。
キャラクターの肌と影
肌にはなるべく線数の高い(細かい)10%前後のトーンを使うのがコツです。ザラつきが抑えられ、キャラクターの肌が滑らかに見えます。
影を付ける時は、光源を意識しましょう。髪の毛が額に落とす影、鼻の横、顎の下などに影を置くことで、キャラの存在感が一気に増します。影の端を少しだけ「削る(ぼかす)」と、柔らかい女性らしい表現になります。
衣服の質感を変える
全身を同じ種類のトーンで塗るのではなく、服の素材に合わせて種類を変えてみましょう。
- デニム地:砂目トーン(ランダムな点)を使うと、生地のざらつきが表現できます。
- ニットや制服:チェック柄や千鳥格子などの「柄トーン」を活用すると、作画の手間を省きつつ華やかさが出ます。
- 金属やレザー:コントラストの強いグラデーションを使うと、パキッとした硬い光沢を表現できます。
背景と遠近感のコントロール
背景にトーンを使う時は「遠近感」を意識します。手前の物にはハッキリしたトーンを使い、奥に行くほど薄いトーン、あるいはグラデーションを使って白く飛ばすようにすると、画面に奥行きが生まれます。
また、空を描く際に「下から上へ濃くなるグラデーション」を貼ると、地平線の広がりを感じさせる美しい空が表現できます。
デジタル漫画の大敵「モアレ」を防ぐ鉄則
デジタルでトーンを扱う際、最も気をつけたいのが「モアレ(縞模様)」です。印刷した時に、意図しない変な模様が出てしまう現象ですね。これを防ぐには3つの鉄則があります。
1つ目は、トーンを重ねる時に「同じ線数」を使うこと。例えば60Lのトーンの上に50Lを重ねると、高確率でモアレが発生します。
2つ目は、角度を安易に変えないこと。多くのトーンは45度の角度で配置されています。重ねる場合は角度を完全に一致させるか、あるいは30度以上大きくズラす必要がありますが、初心者のうちは「同じ線数・同じ角度」を守るのが一番安全です。
3つ目は、画像の書き出し設定です。Web用の画像なら問題ありませんが、同人誌などの印刷用に出力する場合は、必ず「モノクロ2階調」を選びましょう。アンチエイリアス(境界のぼかし)がかかった状態で出力すると、印刷時にドットが潰れて汚くなってしまいます。
作業環境を整えるなら、高精細なモニターを備えたiPad Proなどを使用すると、ドットの状態を正確に確認しながら作業が進められます。
表現の幅を広げる!プロの応用テクニック
基本がマスターできたら、少し凝ったテクニックにも挑戦してみましょう。
トーン削りで光を表現する
貼ったトーンの一部をカッター(デジタルなら削り用ブラシ)で削る技法です。雲の輪郭をフワフワさせたり、服のシワに沿って光を透かしたりすることで、手描き感のある温かい画面になります。
ホワイト(白)でさらに立体感を出す
トーンの上から「ホワイト」を乗せるのも効果的です。瞳の中のハイライトや、髪の天使の輪、金属の最も光っている部分などに白を置くと、グレーとのコントラストで質感が際立ちます。
重ね貼りで深い影を作る
同じ線数のトーンを少しだけズラして重ねると、より濃い影や複雑な密度を表現できます。ただし、デジタルで行う場合はレイヤーの設定に注意が必要ですので、プレビュー画面でモアレが出ていないか入念にチェックしてくださいね。
アナログ派の方はアイシースクリーンなどの定番ブランドを用意して、カッターさばきを練習するのも漫画上達の近道です。
漫画トーンの意味とは?効果的な使い方や実例まとめ
ここまで、漫画トーンの意味や基本的な選び方、そして表現力を高める実例について詳しく解説してきました。
トーンは単なる作業の工程ではなく、あなたの描いた世界に息を吹き込むための「演出」です。適切な線数と濃度を選び、光の方向を意識して影を置くだけで、キャラクターは生き生きと動き出し、物語の没入感は格段に上がります。
最後に大切なポイントをまとめます。
- トーンは「中間色」を作り出し、立体感や心理描写を助ける。
- 初心者は「60L」を基準に、濃度10〜30%を使い分ける。
- モアレを防ぐために、線数と角度のルールを厳守する。
- 「削り」や「ホワイト」を組み合わせて、自分なりの質感を追求する。
最初から完璧に使いこなすのは難しいかもしれません。まずは液晶ペンタブレットなどのツールを使って、いろいろな種類のトーンを試しに貼ってみることから始めてみてください。
あなたの漫画が、トーンの力を借りてより素晴らしい作品になることを応援しています!この記事でご紹介した「漫画トーンの意味とは?効果的な使い方や実例」を参考に、ぜひ次の原稿で新しい表現にチャレンジしてみてくださいね。

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