「漫画を描いてみたいけれど、コマ割りってどうすればいいの?」
「なんとなく描いてみたけれど、なんだか読みづらい気がする……」
そんな悩み、実は多くの初心者の方が抱えているものです。真っ白な原稿用紙を前にして、どこに線を引けばいいのか迷ってしまうのは当然のこと。漫画におけるコマ割りは、いわば「演出家」や「カメラマン」の役割を果たす、作品の命とも言える工程だからです。
でも、安心してください。コマ割りには、読者が無意識に心地よく読み進められる「鉄則」があります。このルールさえ押さえれば、誰でも「プロっぽくて読みやすい漫画」が描けるようになります。
今回は、漫画のコマ割りのコツを、基礎から応用までたっぷりとお伝えします。
なぜコマ割りが重要なのか?読者の視線を操る魔法
漫画が小説やイラストと決定的に違うのは、「時間の流れ」をコマで制御している点です。
コマ割りは、単に絵を囲う枠ではありません。読者の視線をどこへ導き、どのタイミングで驚かせ、どのくらいの速さで物語を体験させるか。そのすべてをコントロールする設計図なのです。
初心者が陥りがちな「読みづらい漫画」の正体は、この視線の誘導がうまくいっていないことにあります。逆に言えば、コマ割りの基本ルールをマスターするだけで、あなたの漫画のクオリティは劇的に向上します。
まずは、絶対に外せない基本のキから見ていきましょう。
漫画のコマ割りのコツ:視線誘導の「Zの法則」をマスターする
日本の漫画には、全作品に共通する「視線の動線」があります。これを無視してしまうと、読者は「どのコマを次に読めばいいの?」と迷子になってしまいます。
1. 「右上から左下へ」が絶対の基本
日本の漫画は右開きです。そのため、読者の視線は基本的に「右上」から始まり、左へ進み、一段下がってまた右から左へ……という動きを繰り返します。これをアルファベットの「Z」になぞらえて「Zの法則」と呼びます。
2. 「田の字」は絶対に避ける
最もやってはいけない失敗が、4つのコマの角が一点で交わる「十字の交差点」を作ってしまうことです。視線が十字路に差し掛かると、読者は反射的に「下に行くべきか、左に行くべきか」を迷ってしまいます。
これを防ぐコツは、縦の境界線を必ず「ずらす」こと。これだけで、視線の流れが一本道になり、ストレスなく読み進められるようになります。
3. 段落の意識を持つ
1ページを2段から4段程度の「段落」として捉えましょう。まず一段目を右から左へ読み切り、次に二段目へ行く。この段落構造がハッキリしているほど、読者は物語の内容に集中できるようになります。
コマの間隔に隠された「時間」のルール
コマとコマの間の白い隙間、実はここにも重要な意味があります。プロの漫画家はこの数ミリの差で、物語のテンポを調整しています。
上下は広く、左右は狭く
これが最もスタンダードなルールです。
- 左右の間隔:約3mm〜5mm
- 上下の間隔:約8mm〜10mm
なぜ上下を広くするのでしょうか? それは「段が変わったこと」を脳に教えるためです。左右が狭く、上下が広いことで、読者は自然に「横のつながり」を先に認識し、その後に「下の段」へ視線を移すようになります。
「間」を表現する余白の活用
あえて上下の間隔をさらに広く取ることもあります。これは映画でいうところの「フェードアウト」や「数分後のシーン」など、時間の経過や場面転換を表現するテクニックです。逆に、コマをピタリとくっつければ、連続した一瞬の動きを表現できます。
ページ構成の黄金比!1ページに何コマ入れるべき?
初心者のうちは、ついついたくさんの情報を詰め込みたくなってしまいます。しかし、コマ数が多すぎると、一つひとつの絵が小さくなり、何が起きているのか伝わりづらくなってしまいます。
ベストは5コマから7コマ
1ページあたりのコマ数は、5コマから7コマ程度に抑えるのが最も読みやすいと言われています。8コマを超えてくると、読者は「読むのが大変だ」と感じ始めます。
もし伝えたいことが多い場合は、無理に1ページに詰め込むのではなく、思い切ってページ数を増やしましょう。
「見せゴマ」を必ず一つ作る
そのページで最も重要なシーン、あるいは最もカッコいいキャラクターの顔は、他のコマよりも圧倒的に大きく描きます。これを「大ゴマ(見せゴマ)」と呼びます。
すべてのコマが同じ大きさだと、ページ全体が平坦に見えてしまいます。「このページで一番伝えたいことは何か?」を決め、それをドカンと大きく配置することからコマ割りを考えてみてください。
感情を揺さぶる応用テクニック:コマの形で演出する
基本の四角いコマ割りに慣れてきたら、次はコマの「形」を変えて演出の幅を広げてみましょう。
1. 迫力を出す「斜めのコマ(変形コマ)」
アクションシーンや、キャラクターがパニックになっている場面では、コマの枠線を斜めに引いてみましょう。画面に「動き」と「不安定さ」が生まれ、読者の心拍数を上げる効果があります。ただし、使いすぎると画面がうるさくなってしまうので、ここぞという見せ場で使いましょう。
2. 存在感を放つ「断ち切り(タチキリ)」
コマの枠線を、原稿用紙の端まで突き抜けさせる手法です。
キャラクターが枠に収まりきらないほどの迫力を持っているときや、広大な風景を見せたいときに有効です。画面が開放的になり、読者がその世界に入り込んだような没入感を与えられます。
3. 感情を強調する「ブチ抜き」
コマの枠線を無視して、キャラクターの姿を背景や他のコマの上に描くテクニックです。そのキャラクターがいかに重要か、あるいはその瞬間の感情がいかに強いかを強調できます。少女漫画などで、心情を深く掘り下げるときによく使われます。
スマホ時代の新潮流:タテスクロール漫画のコツ
最近では、noteやSNSで漫画を公開する方も多いですよね。特にスマホで読まれる「タテスクロール(Webtoon形式)」の場合は、これまでの紙のルールとは少し異なるコツが必要です。
視線は「Z」から「I」へ
スマホの場合、視線は上から下へ一方通行です。そのため、左右にコマを並べるよりも、一つひとつのコマを大きく縦に並べていく方が好まれます。
「指の動き」を意識した余白
スマホ漫画では、画面をスクロールする指の動きが「テンポ」になります。
重要なシーンの前では、あえて何もない白い余白を長く取ってみてください。スクロールする間に読者の期待感が高まり、次に現れる大ゴマの衝撃を強めることができます。
デジタル環境で描くなら、iPadや液晶タブレットを使って、実際にスマホでどう見えるかを確認しながら割っていくのが上達への近道です。
よくある失敗:なぜか素人っぽく見える原因と対策
一生懸命描いているのに、どこか垢抜けない。そんなときは以下のポイントをチェックしてみてください。
1. 「顔のアップ」ばかりになっていないか?
キャラクターの感情を伝えようとするあまり、ページ全体が顔のアップばかりになっていませんか? これでは、キャラクターが「どこで」「何をしているのか」が伝わりません。
ページの中に必ず一つは、背景を含めた「引きの絵(ロングショット)」を入れましょう。状況を説明するコマがあるからこそ、アップのコマが活きてくるのです。
2. キャラクターの向き(上手と下手)
漫画には「上手(かみて/右側)」と「下手(しもて/左側)」という概念があります。
基本的には、主人公や攻めている側を右側に配置し、敵や受け身の側を左側に配置すると、読者の脳内ですんなりと状況が整理されます。会話シーンで、キャラクターの立ち位置がコロコロ変わってしまうと読者は混乱するので注意しましょう。
漫画制作を支える便利ツール
コマ割りや作画をスムーズにするためには、道具選びも大切です。
最近の定番は、漫画制作に特化したソフト。コマ枠を引くのも、間隔を調整するのも、デジタルなら一瞬で終わります。
制作環境を整えるなら、CLIP STUDIO PAINTのような専用ソフトが非常に強力です。また、手描き感を大切にしたい方は、ワコム ペンタブレットなどの信頼できる入力デバイスを選ぶと、ストレスなく作業に没頭できます。
漫画のコマ割りのコツを掴んで、自分だけの物語を描こう!
いかがでしたでしょうか。
漫画のコマ割りには数多くのテクニックがありますが、一番大切なのは「読者に何を伝えたいか」という心です。
- 視線誘導(Zの法則)を守る
- 上下の間隔を広く取ってリズムを作る
- 1ページに一つは大きな「見せゴマ」を作る
- スマホなら縦の余白を意識する
まずはこの4点だけを意識して、ネーム(下書き)を描いてみてください。最初は難しく感じるかもしれませんが、何ページか描いていくうちに、自分なりの「心地よいリズム」が見つかるはずです。
もし、どうしても行き詰まったときは、自分の好きな漫画を「枠線だけ」なぞってみる練習もおすすめです。プロがなぜここでコマを割ったのか、なぜこの大きさに配置したのか、その意図が驚くほどよく見えてきます。
コマ割りは、あなたの想像力を形にするための強力な武器です。ぜひ楽しみながら、あなただけの素晴らしい漫画を完成させてくださいね。
あなたの創作活動を応援しています!

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