「主役はバッチリ描けたのに、背景に人を配置した途端に画面がスカスカに見える…」「モブを描くのが面倒すぎて、漫画を描く手が止まってしまう」
そんな悩みを抱えていませんか?漫画を描き始めたばかりの頃、誰もがぶつかる壁が「モブ(群衆)」の存在です。メインキャラクターと同じ熱量で描いていたら時間がいくらあっても足りませんし、かといって雑に描くと世界観が台無しになってしまいます。
実は、漫画のモブキャラには「効率よく、それっぽく見せる」ための型があります。この記事では、初心者の方でも今日から実践できる、漫画のモブキャラの簡単な描き方とコツを徹底的に解説します。
なぜモブキャラが漫画において重要なのか
モブキャラは、直訳すれば「群衆」ですが、漫画においては単なる背景ではありません。そのシーンがどれくらい賑やかなのか、あるいは静まり返っているのかという「空気感」を伝える重要な役割を持っています。
空間の説得力を高める「舞台装置」
誰もいない渋谷の交差点は不自然ですよね。適切な場所に適切なモブがいるだけで、その場所が「生きている」ように見えます。モブは、主人公たちが存在している世界のリアリティを支える土台なのです。
視線誘導としての役割
モブの向きや配置を工夫することで、読者の視線を自然とメインキャラクターへ誘導することができます。上手な漫画家さんは、モブを「壁」や「矢印」のように使い、読者が迷わないように画面をコントロールしています。
漫画のモブキャラを描くときの「抜き」の考え方
初心者が陥りがちな失敗は、モブの一人ひとりを丁寧に描き込みすぎてしまうことです。モブの鉄則は「目立たせないこと」。そのための具体的なコツを見ていきましょう。
詳細をあえて描かない「情報の引き算」
メインキャラクターを描くとき、瞳のハイライトや髪の毛の流れまで細かく描写しますよね。しかし、モブで同じことをすると画面がうるさくなり、誰が主人公かわからなくなります。
- 目鼻立ちは最小限に: 遠くにいるモブなら、目は「点」や「横線」だけで十分です。鼻は描かなくても成立します。
- 髪型を記号化する: 複雑な毛束は描かず、「ショート」「ポニーテール」といったシルエットだけで表現しましょう。
- 服のシワを減らす: 主要な関節部分に数本入れる程度にとどめ、平面的に処理するのがコツです。
線の太さで距離感を出す
手前のモブはしっかりした線で、奥にいくほど細く、あるいは薄い線で描くようにしましょう。これだけで、描き込まなくても自然と奥行きが生まれます。
【実践】モブキャラを簡単に描く3つのステップ
では、実際にどう描いていけばいいのか。効率を重視した手順をご紹介します。
ステップ1:シルエットから形をとる
いきなり目鼻から描き始めるのはNGです。まずは「棒人間」の進化系のような、大まかなシルエットから配置を決めます。このとき、頭の大きさを揃えるのではなく、地面との接地面(足元)を意識するとパースが崩れにくくなります。
ステップ2:服装を「テンプレート化」する
モブの服装に個性を出す必要はありません。季節に合わせた定番のスタイルを自分の中でいくつか持っておくと迷いがなくなります。
- 男性: Tシャツ、パーカー、シャツ+チノパン
- 女性: ブラウス、カットソー+スカートやパンツ
これらを組み合わせて「AさんはTシャツ、Bさんはパーカー」と機械的に割り振るだけで、自然な街並みが完成します。
ステップ3:アイレベル(目の高さ)を合わせる
モブを配置する際に最も重要なのが「アイレベル」です。坂道などの特殊な状況を除けば、同じ地面に立っている人たちの「目の高さ」は、カメラの高さ(アイレベル)のラインに集約されます。
遠くにいる人は小さく、近くにいる人は大きく描きますが、その「目の位置」が水平線上に並ぶように意識するだけで、空間に統一感が生まれます。
時短に役立つデジタルツールの活用術
現代の漫画制作において、すべてのモブを手描きする必要はありません。便利なツールを賢く使いましょう。
3Dモデルをアタリにする
iPadやPCで制作しているなら、3Dマネキンを背景に配置するのが最も確実です。ポーズや角度を自由に変えられるので、難しい俯瞰(ふかん)や煽り(あおり)の構図でも、人体が崩れる心配がありません。
ブラシ素材で群衆を一瞬で作る
CLIP STUDIO PAINTなどのソフトには、ペンでなぞるだけで通行人のシルエットや人だかりが描ける「モブブラシ」が多数公開されています。スタジアムの観客や、遠景の街並みなどは、こうした素材を積極的に活用して、浮いた時間をメインキャラクターの描写に回しましょう。
モブキャラを「それっぽく」見せる演出のコツ
形が描けるようになったら、次は「存在感の消し方」を工夫してみましょう。
グレーやトーンで「飛ばす」
背景に馴染ませるために、モブ全体を薄いグレーで塗ったり、網点のトーンを貼って「背景の一部」として処理する手法があります。これにより、白黒のコントラストがはっきりしているメインキャラクターがパッと目に飛び込んでくるようになります。
あえて顔を描かない「のっぺらぼう」
心理的な距離が遠いモブであれば、目鼻を描かずにシルエットだけにしたり、顔をあえて髪の影で隠したりするのも有効なテクニックです。読者の想像力に任せることで、かえって自然なモブとして受け入れられます。
初心者が意識したいキャラクターの描き分け
モブとはいえ、全員が同じ身長・同じ体型だと違和感が出ます。簡単にバリエーションを出すためのポイントは以下の通りです。
- 体型の差: 細い人、ふくよかな人、背の高い人を混ぜる。
- 年齢層のミックス: 子供や老人を一人混ぜるだけで、一気に生活感が増します。
- 持ち物の追加: バッグを持っている人、スマートフォンを見ている人、傘を差している人など、日常的な動作をプラスしてみましょう。
漫画のモブキャラの簡単な描き方とコツ:まとめ
いかがでしたでしょうか。モブキャラ攻略の鍵は、技術力以上に「いかに手を抜いて、それでいて手を抜いているように見せないか」という戦略にあります。
最後におさらいしましょう。
- 役割を理解する: モブは世界観を作る「舞台装置」であり、視線誘導の「矢印」である。
- 引き算で描く: 目鼻立ちは最小限。線の太さを変えて遠近感を演出する。
- 効率化を徹底する: 3Dモデルやブラシ素材をフル活用し、アイレベルの法則を守る。
- 演出で馴染ませる: グレー塗りやトーン処理で、メインキャラを際立たせる。
モブが描けるようになると、あなたの漫画の世界は一気に広がりを見せます。まずは画面の隅っこに、小さな一人を描くことから始めてみてください。
もっと具体的な背景の描き方や、パースの基本についても知りたいですか?もし興味があれば、次は「パース定規を使った街並みの描き方」についても解説していきますね。

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