「あの独特な雰囲気のラブコメ、もっと読みたかったのに……」
そんな風に、武田すん先生の漫画『ハルとナツ』の結末に驚いた方は多いのではないでしょうか。
全5巻という、短くも濃密な巻数。最終回のあの「含みのある」終わり方。ファンの間では今でも「これって打ち切りだったの?」「本当はもっと続く予定があったんじゃない?」と議論になることがよくあります。
今回は、そんな『ハルとナツ』の打ち切り説の真相や、なぜ多くの読者がそう感じたのか、そして物語が辿り着いた結末について、ファンの視点を交えながら深掘りしていきます。
『ハルとナツ』打ち切り説が出る最大の理由
結論から言うと、公式に「打ち切り」と発表された事実はどこにもありません。しかし、なぜこれほどまでに「打ち切り」という言葉が付きまとうのでしょうか。
その最大の理由は、第5巻(最終巻)のスピード感にあります。物語の終盤、それまで丁寧に描かれていた「ハル」と「ナツ」という双子の姉妹、そして主人公・誠の歪な関係性に、新しいキャラクターが投入されるなど、明らかに世界観が広がる兆しがありました。
ところが、その伏線が大きく花開く前に、物語はふっと幕を閉じます。読者からすれば「ここからもっとドロドロの修羅場が始まるのでは?」と期待が高まったタイミングでの完結だったため、唐突な印象を拭えなかったのが正直なところでしょう。
また、連載媒体であった『マガジンSPECIAL』の特性も関係しているかもしれません。週刊少年マガジンの増刊的な立ち位置でありながら、独自のファン層を持っていた雑誌でしたが、連載作品の入れ替えや構成の都合で、人気作であってもキリの良いところでまとめざるを得ない状況は珍しくありませんでした。
ヒロインたちの「豹変」と物語の熱量
本作の魅力は何といっても、清楚な妹・ハルと、奔放な姉・ナツのキャラクター性です。
最初は「美少女双子との三角関係」という王道のラブコメ設定に思えましたが、読み進めるうちに読者は武田すん先生の真骨頂を目の当たりにします。特にハルのキャラクター変遷は凄まじいものがありました。
最初は守ってあげたくなるような可憐な少女だったハルが、誠への執着ゆえに「変態的」と言えるほどの奇行に走る姿は、当時の読者に強烈なインパクトを与えました。一方のナツも、妹から大切なものを奪いたいという歪んだ独占欲を見せ、ただの「いい子」ではない危うさが物語の熱量を引き上げていたのです。
このキャラクターたちの「狂気」に近い情熱がピークに達していたからこそ、第5巻での完結が「まだ描けるはずだ」「何らかの外的要因で終わらされたのではないか」という打ち切り説の補強材料になってしまったといえます。
最終回はどうなった?3人が選んだ「共依存」の形
気になる最終回の内容ですが、決してバッドエンドではありません。しかし、いわゆる「どちらかのヒロインを選んでゴールイン」という爽やかな完結でもありませんでした。
誠を巡るハルとナツの争いは、決着がつくどころか、さらに深まっていく予感を感じさせて終わります。誠自身も、二人の狂気に振り回されながらも、その奇妙な関係性から抜け出せなくなっている……。
そんな「地獄のような、でも本人たちにとってはこれ以上ない至福のような日常」が続いていく終わり方は、ある意味で非常に武田すん先生らしいエッジの効いた着地だったとも言えます。
もしこれが打ち切りであったとしても、あの「答えを出さないまま走り続ける」エンディングは、作品が持つ毒気やフェティシズムを損なわない、最善の逃げ切り方だったのかもしれません。
武田すん先生の作風と『ハルとナツ』の立ち位置
『ハルとナツ』を語る上で外せないのが、後に大ヒット作となる『グレイプニル』へと繋がる系譜です。
グレイプニルを読んだことがある方ならわかる通り、武田先生は「可愛い女の子」の皮を被った「ドロドロとした内面」や「異形への変身」、そして「逃げ場のない関係性」を描く天才です。
『ハルとナツ』は、その才能がラブコメというジャンルの枠内で爆発しかかっていた時期の作品です。エロティックな描写の中に潜む、人間の独占欲や変態性。それをコミカルに、かつスタイリッシュに描く手法は、この全5巻の中で既に完成されていました。
そのため、現在この作品を振り返ると「打ち切りで残念だった作品」というよりは、「武田すんワールドの原液が詰まった、短くも鋭い傑作」という評価に変わってきているように感じます。
『ハルとナツ 打ち切り』というキーワードから見える読者の愛
ネットで「ハルとナツ 打ち切り」と検索する人の多くは、作品を貶めたいわけではなく、「もっとこの3人の物語を見ていたかった」という未練を抱えているファンでしょう。
今の漫画界では、10巻、20巻と続く長期連載が一般的ですが、あえて5巻というボリュームで物語を閉じ、読者に強烈な余韻(あるいは消化不良感)を残すことも、一つの表現の形かもしれません。
もし、この記事を読んで懐かしくなった方がいれば、ぜひお手元のハルとナツを読み返してみてください。当時は気づかなかった、最終回に向けた細かな心理描写や、ハルの「壊れっぷり」の予兆が、全5巻の中に完璧な配置で散りばめられていることに気づくはずです。
まとめ:漫画『ハルとナツ』は打ち切り?全5巻で完結した理由と最終回の結末を徹底調査!
改めて振り返ってみると、『ハルとナツ』という作品は、打ち切りというネガティブな言葉では括りきれない、強烈な個性を持った作品でした。
- 打ち切り説の真相: 公式な発表はないが、最終巻の展開の速さが噂を呼んだ。
- 完結の理由: 物語の核心である「双子の執着」が極限まで描かれ、一つの区切りを迎えたため。
- 最終回の結末: 決着をつけないまま、3人の共依存的な日常が続いていくという、余韻を残すエンディング。
武田すん先生のその後の活躍を考えれば、この作品で描かれたエッセンスは、より大きなスケールの物語へと引き継がれていったといえます。
「打ち切り」という噂が出るほどに、読者の心に爪痕を残したハルとナツ。彼女たちの物語は、本を閉じた後も私たちの想像の中で、今なお誠を振り回しながら続いているのかもしれませんね。

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