「攻殻機動隊 SAC_2045」を全話視聴し終えたあと、あるいはこれから観ようとしている方の間で、ひっそりと囁かれている噂があります。それは「この作品、もしかして打ち切りだったんじゃないの?」という疑問です。
確かに、物語の終わり方やシリーズの展開スピードを振り返ると、そう感じてしまう瞬間があるかもしれません。特に熱狂的なファンが多いシリーズだからこそ、期待と現実のギャップから「もっと続きがあるはずだ」と願う気持ちが、いつの間にか「打ち切り説」へと形を変えてしまったのでしょう。
しかし、結論からお伝えすると、本作は打ち切りではありません。緻密に計算された構成のもと、当初の予定通りに幕を下ろした「完結作」なのです。
今回は、なぜ打ち切りという噂が流れたのか、その背景にある理由を深掘りしながら、物語が迎えた結末の意味、そして誰もが気になるシーズン3(続編)の可能性について、ファンの視点に立って徹底的に解説していきます。
なぜ「打ち切り」という噂が広まったのか?
インターネットの検索窓に作品名を入れると、予測候補に「打ち切り」という不穏なワードが出てくることがあります。火のない所に煙は立たないと言いますが、本作においてその「煙」となった要因はいくつか考えられます。
まず一つ目は、シーズン1のラストがあまりにも衝撃的な「引き」で終わったことです。2020年に配信された第12話は、物語がまさに核心に触れようとした瞬間、視聴者を突き放すような形で幕を閉じました。トグサの行方やポスト・ヒューマンの正体など、多くの謎を残したまま2年近くも続編の音沙汰がなかったため、「制作が止まったのではないか」「このまま打ち切られるのでは」という不安がファンの間で増幅してしまったのです。
二つ目は、フル3DCGへの移行に伴うビジュアル面の変化です。これまでの「S.A.C.」シリーズで見慣れた手描きアニメの質感から、フォトリアルかつ滑らかな3Dモデルへと一新されたことで、初期段階では戸惑いの声が多く上がりました。SNS等での否定的な意見を目にした人が、「評価が低いから途中で打ち切りになるだろう」と早合点してしまった側面も否めません。
しかし、これらはあくまで視聴者側の推測に過ぎませんでした。実際には、Netflixでの展開を見据えた大規模なプロジェクトとして、全24話を前後編で描くという計画は最初から決まっていたのです。
シーズン2で描かれた「物語の完結」と少佐の決断
2022年に配信されたシーズン2(第13話〜第24話)は、シーズン1で散りばめられた伏線を回収しつつ、加速度的に物語が収束していきました。
本作のメインテーマであった「ポスト・ヒューマン」との対峙は、単なる勧善懲悪の戦いでは終わりませんでした。劇中で提示された「ダブルシンク(二重思考)」という概念は、現実と虚構が混濁する現代社会への強烈なアンチテーゼとなっており、神山健治監督らしい極めて哲学的なメッセージが込められていました。
最終話において、草薙素子が下した決断。それは公安9課という組織の枠組みを超え、人類の新たな進化の形を受け入れるかどうかという、シリーズ史上最も重い選択でした。この結末によって、物語は一つのサイクルを完全に終えています。
「物語を無理やり畳んだ」と感じた人もいるかもしれませんが、むしろあれ以上の蛇足は不要なほど、美しくも残酷なピリオドが打たれたと言えるでしょう。少佐がネットワークの荒野へと消えていく姿は、シリーズを通して一貫している「ゴーストの旅路」の終着点の一つなのです。
劇場版「最後の人間」が果たした役割
配信版の完結から約1年後、2023年に公開された劇場版『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』の存在も、打ち切り説を否定する強力な証拠です。
この劇場版は、シーズン2全12話を藤井道人監督の手によって再構成したものです。単なる総集編にとどまらず、新たなカットの追加やカラーグレーディングの調整が行われ、物語の解釈をより深める内容となっていました。
もし打ち切り作品であれば、これほど手間をかけた劇場版が製作されることはありません。公式としても、この劇場版を「SAC_2045シリーズの真の完結編」と位置づけており、プロジェクト全体が成功のうちに幕を閉じたことを証明しています。劇場の大スクリーンで映し出された少佐の姿は、多くのファンにとって、この長い旅路を見届けるための「儀式」のような役割を果たしました。
シーズン3が制作される可能性は限りなく低い
さて、完結したと言われても、ファンとしてはやはり「シーズン3」への期待を捨てきれないものです。タチコマたちの活躍や、公安9課のメンバーが再び集結する姿をまた観たいと願うのは当然のことでしょう。
しかし、冷静に現状を分析すると、シーズン3が制作される可能性は極めて低いと言わざるを得ません。
最大の理由は、物語の構造的な問題です。シーズン2のラストにおいて、草薙素子という存在は従来の物理的な世界から一段階上のレイヤーへと移行してしまいました。彼女が不在、あるいはあのような状態になった後で、再び「公安9課の事件簿」として物語を継続させるのは、これまでのシリーズの重みを損なうリスクがあります。
また、監督陣のコメントを見ても、この5年間で持てるすべてのアイデアを本作に注ぎ込んだという充足感が伝わってきます。クリエイターが「描き切った」と感じている作品を、商業的な理由だけで無理に引き延ばすことは、攻殻機動隊というブランドにおいても稀なケースです。
2026年に始動する「新たな攻殻機動隊」への期待
「SAC_2045」の続編がないことに落胆している方に、明るいニュースもあります。それは、2026年に放送が予定されている全く新しいアニメシリーズ『The Ghost in the Shell(仮)』の始動です。
こちらは「SAC_2045」の続きではなく、制作会社をサイエンスSARUに移し、改めて士郎正宗氏の原作をベースにした新プロジェクトになると発表されています。つまり、一つの物語が終わったことで、また新しい「攻殻機動隊」の世界が産声を上げようとしているのです。
「SAC_2045」は打ち切りではなく、次なる新シリーズへとバトンを繋ぐための、壮大なフィナーレだったと捉えるのが正解でしょう。
攻殻機動隊シリーズをより深く楽しむためのアイテム
本作を観て、改めて攻殻機動隊の世界観に浸りたいと感じた方も多いはずです。過去作を振り返ったり、設定資料を読み解いたりすることで、本作の結末が持つ意味がより鮮明に見えてくるかもしれません。
映像体験をより高めたいなら、高画質なディスプレイや音響設備を整えるのも一つの手です。例えば、最新のFire TV Stick 4K Maxを使って、Netflixの4K映像を大画面で楽しむのは至福の時間と言えるでしょう。
また、本作のキャラクターデザインを手掛けたイリヤ・クブシノブ氏の美麗なイラストを堪能できる攻殻機動隊 SAC_2045 公式設定資料集などの書籍は、3DCGの裏側にある繊細な筆致を感じることができるため、ファンなら手元に置いておきたい一冊です。
もし、かつての「S.A.C.」シリーズを未視聴であれば、攻殻機動隊 S.A.C. Blu-ray Disc BOXで、若き日の(?)公安9課の活躍を網羅するのもおすすめです。今回の「SAC_2045」が、いかに過去作へのリスペクトを込めて作られていたかが手に取るように分かります。
攻殻機動隊 SAC_2045は打ち切り?完結の真相とシーズン3の可能性まとめ
改めて整理すると、「攻殻機動隊 SAC_2045」は決して打ち切りではなく、周到に準備された全24話と劇場版をもって、美しく完結を迎えました。
打ち切りという噂は、作品への高い期待感と、あまりにも濃密で哲学的な結末がゆえの「ロス感」が生んだ幻影に過ぎません。シーズン3の制作予定はありませんが、それは物語が完成された証でもあります。
私たちは今、一つの伝説が幕を閉じ、また新たな伝説(2026年の新シリーズ)が始まるまでの貴重な過渡期にいます。もし、ラストシーンの意味に迷ったり、物語の展開に疑問を感じたりしたときは、もう一度最初から全話を一気見してみてください。きっと、初見では気づかなかった「少佐の真意」が、ネットワークのどこかに浮かび上がってくるはずです。
「ネットは広大だわ」という有名なセリフ通り、攻殻機動隊の世界はこれからも形を変え、私たちの前に現れ続けることでしょう。その時まで、この完結した物語を大切に反芻していきたいものです。

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