「えっ、ここで終わり…?」
2019年、最終回の放送が終わった瞬間にテレビの前で凍りついたファンは少なくないはず。アニメ『星合の空』は、瑞々しいソフトテニスの描写と、それとは対照的な「家庭に潜む闇」を真正面から描いた意欲作でした。
しかし、第12話のラストはあまりにも衝撃的で、多くの伏線が残されたまま幕を閉じました。ネット上では「打ち切りなの?」「続きはどうなるの?」と悲鳴に近い声が溢れましたが、実はこの背景には、アニメ業界でも異例とも言える特殊な事情があったのです。
今回は、なぜ『星合の空』が「あのような形」で終わらざるを得なかったのか、赤根和博監督が明かした真相と、現在も模索され続けている続編の可能性について、ファンの熱意を込めて徹底的に深掘りしていきます。
本来は全24話だった?制作現場で起きた「話数短縮」の悲劇
まず、多くの人が勘違いしがちなのが「人気がなかったから打ち切られた」という点です。しかし、事実は全く逆。本作は放送当時から、その繊細な演出と重厚なドラマ性が高く評価されていました。
赤根和博監督の証言によると、プロジェクトのスタート当初、この物語は「全24話(2クール)」の構成で動いていました。監督は24話かけて少年たちの成長と、彼らが抱える過酷な家庭環境からの解放を描き切るつもりで、全話分のシナリオを完成させ、絵コンテの作業も着々と進めていたのです。
ところが、放送開始のわずか数ヶ月前、製作委員会から「12話に変更してほしい」という非情な通告が届きます。理由は表向きには語られていませんが、出資状況や放送枠の確保、あるいは制作スケジュールの逼迫など、大人の事情が絡み合っていたと推測されます。
アニメファンなら、スマホやタブレットでiPad Proを片手に最新話を追うのが当たり前の時代ですが、その裏側にある制作の現場は、想像以上にシビアな数字と政治に支配されているのです。
なぜ物語を「完結」させずに放送したのか
ここで一つの疑問が浮かびます。話数が半分になったのなら、物語を12話に合わせて無理やり完結させる(いわゆる俺たちの戦いはこれからだエンドにする)こともできたはずです。
しかし、赤根監督はあえてそれをしませんでした。「24話構成のままの12話分」をそのまま放送するという、クリエイターとしてのプライドを賭けた決断を下したのです。
監督はSNSなどで、「12話用に中身を圧縮してしまえば、作品の魂が壊れてしまう」という趣旨の発言をされています。あえて中途半端なところで止めることで、視聴者に「物語はまだ終わっていない」という事実を突きつけ、同時に製作サイドや業界への無言の抵抗を示したのかもしれません。
あの中途半端な終わり方は、失敗ではなく、作品を守るための「執念」だったのです。
深すぎる闇。スポンサーが敬遠した可能性という考察
『星合の空』を語る上で避けて通れないのが、毒親、虐待、ネグレクト、性自認といった極めて重いテーマです。
主人公の桂木眞己が直面する父親からの暴力や、キャプテンの新城柊真が抱える母親との確執。これらは現代社会のリアルを映し出していましたが、同時にスポンサー企業にとっては「扱いづらい内容」と映った可能性も否定できません。
きらきらしたスポーツ根性モノを期待していた層に対し、あまりに生々しい「子供たちの絶望」を突きつけたことで、商業的なプロモーションが難航したのではないか、という見方もあります。
しかし、そうした困難なテーマに切り込んだからこそ、本作は今もなお「忘れられない名作」として語り継がれているのも事実です。高画質な有機ELテレビで観るあの雨の日のシーンや、眞己の揺れる瞳の描写は、安易なハッピーエンドよりも深く、私たちの心に爪痕を残しました。
放送後の奇跡。スペシャルメモリアルPVが示した「その後」
放送終了後、多くのファンが「このまま終わらせていいはずがない」と声を上げました。その熱意に応えるように、2021年には「星合の空 スペシャルメモリアルPV」が公開されました。
このPVは、単なる総集編ではありません。本編から2年後、中学生だった眞己たちが成長した姿を描いた新規カットが含まれていました。高校生になった彼らが、それぞれの葛藤を抱えながらも、まだテニスと向き合っている姿。そして、12話のあの事件を経て、彼らがどのような道を選んだのかを予感させる内容でした。
このPVの制作費の一部は、赤根監督自身の持ち出しや、スタッフのボランティア精神に近い協力があったとも言われています。監督は今でも、13話から24話までのコンテを抱え、形にするチャンスを待ち続けています。
続編制作への壁と、私たちができること
では、具体的に第2期の可能性はどのくらいあるのでしょうか。
正直に言えば、現状はかなり厳しい道のりです。アニメ制作には数億円単位の資金と、数年前から予約が必要な制作ラインの確保が必須です。現在のエイトビットなどの制作会社も、数年先までスケジュールが埋まっていることが一般的です。
しかし、希望はあります。近年、Netflixなどの外資系配信プラットフォームが、一度終わった作品や、国内では資金調達が難しかった尖った作品を拾い上げるケースが増えています。Fire TV Stickなどのデバイスで世界中に一斉配信される今の環境は、『星合の空』のような「海外評価が極めて高い作品」にとって追い風です。
また、クラウドファンディングの活用も一つの選択肢でしょう。監督が「いつか必ず続きを作る」と言い続けている限り、その可能性はゼロではありません。
星合の空が打ち切りになった理由は?監督の想いとこれからの物語
まとめると、『星合の空』が中途半端に終わったのは、作品の質が悪かったからではなく、放送直前の「24話から12話への短縮通告」という不運に見舞われたからでした。
そして、赤根監督があえて物語を完結させなかったのは、いつか必ず続きを描くという強い決意の表れでもあります。12話という枠に押し込めず、作品が持つ本来のポテンシャルを信じたからこその、あの「中断」だったのです。
私たちは、いつか来るはずの「13話」を待つ間、何度でも本作を見返すべきかもしれません。改めて一話からじっくり鑑賞すると、キャラクターたちの些細な表情や仕草に、後半への伏線が細かく張り巡らされていることに気づかされます。
もしあなたがまだ、あの結末の衝撃から立ち直れずにいるのなら、監督のSNSやメモリアルPVをチェックしてみてください。そこには、物語がまだ死んでいないという確かな鼓動が刻まれています。
最後に。星合の空が打ち切りになった理由は?という問いへの真の答えは、「物語が大きすぎて、12話という器には収まりきらなかったから」だと言えるでしょう。眞己たちの物語が、正当な完結を迎えるその日まで、ファンとしてその火を絶やさずに応援し続けたいですね。

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