『ジョジョの奇妙な冒険』を読んでいて、あるいはアニメを観ていて、ふと不思議に思ったことはありませんか?「あれ、さっきまで承太郎の服は黒っぽかったのに、急に背景と一緒に紫になったぞ?」とか、「ジョルノの服って、ピンクなの?それとも青なの?」といった疑問です。
実は、ジョジョの世界には「このキャラの髪は何色」「この服は何色」という固定された決まりがありません。これ、初めて知ると結構衝撃的ですよね。普通の漫画ならキャラクター設定資料で厳密に色が指定されているものですが、ジョジョは正反対。その時々の情熱や空気感で、色が自在に変化するんです。
今回は、そんなジョジョの色彩に隠された秘密や、作者・荒木飛呂彦先生のこだわりについて、じっくり深掘りしていきましょう。これを読めば、次にジョジョを読む時の景色がガラッと変わって見えるはずです。
なぜ「ジョジョの色」には決まりがないのか?
ジョジョを象徴する最大の特徴、それは「定色(ていしょく)」が存在しないことです。公式イラストを見ても、同じキャラクターが1枚の絵ごとに全く違う配色で描かれています。
荒木飛呂彦先生の自由すぎる色彩哲学
作者の荒木飛呂彦先生は、インタビューなどで「色については、その時の気分や画面の構成で決めている」と明言しています。私たちが普段見ている「空は青い」「リンゴは赤い」という常識は、ジョジョの世界では通用しません。
荒木先生が大きな影響を受けたのは、画家のポール・ゴーギャンだと言われています。ゴーギャンの作品には、砂浜をピンクに塗ったり、木を青く塗ったりするものがあります。これは現実を写し取っているのではなく、描き手の「感情」や「感覚」を色に乗せているからです。
ジョジョも同じです。戦いの中でキャラクターが激昂している時は画面全体が赤く燃え上がり、静寂や恐怖が支配するシーンでは寒色系に沈む。つまり、色は物体に付着しているものではなく、その場の「オーラ」や「心理状態」を表現するための演出装置なのです。
印刷技術への割り切りから生まれた副産物
また、意外な理由として「印刷への信頼と諦め」も挙げられています。連載当時のカラー原稿は、印刷に出すとどうしても原画通りの色が出ないことがありました。
それならいっそ「何色で印刷されても、それが一つの表現として成立するように描こう」と、荒木先生は考えるようになったそうです。特定の「正解の色」を設けないことで、逆にどのような環境で見てもジョジョらしさが失われない、タフな芸術性が生まれたというわけですね。
アニメ版で体験する「色化け」の衝撃
原作の「色が固定されていない」という特徴を、アニメ制作陣(デイヴィッドプロダクション)は見事に映像表現へと落とし込みました。
感情の爆発を色で表現する「カラーパレット」
アニメ版ジョジョを観ていると、バトルの決着シーンなどで突然画面の色調が反転したり、サイケデリックな配色に切り替わったりすることがあります。ファンからは「色化け」とも呼ばれるこの演出、実は原作のカラー原画の雰囲気を再現しようという試みなんです。
例えば、第4部の舞台である杜王町。アニメでは空が常に「黄色」や「ピンク」で描かれています。普通の街に見えて、どこか不気味な殺人鬼が潜んでいる……そんな違和感を、空の色一つで表現しているんですね。
もしこれが普通の青空だったら、あの独特のサスペンス感は半分以下になっていたかもしれません。アニメ版は、荒木先生の脳内にある「色彩のルール無用」というスタンスを、最高のかたちで継承していると言えます。
キャラクターの「基本色」はどう決まる?
とはいえ、アニメやゲーム、フィギュアにする際には「ベースとなる色」を決めなくてはなりません。
- 第3部の空条承太郎なら「黒」や「紺」
- 第5部のジョルノ・ジョバァーナなら「ピンク」や「青」
これらはあくまで、そのメディアにおける「最大公約数的なイメージ」に過ぎません。実際、ジョルノの服は原作のカラー原画では青で描かれることも多いですし、ジョジョの奇妙な冒険 超像可動などのフィギュアシリーズでは、セカンドカラー、サードカラーとして全く別の配色のモデルが何種類も発売されています。
「どれが本物か」ではなく「どれも本物である」というのが、ジョジョにおける正しい向き合い方なのです。
芸術の域に達した「ジョジョ立ち」と色彩の相乗効果
ジョジョの魅力を語る上で外せないのが、あの独特なポージング、通称「ジョジョ立ち」です。このポージングと色彩は、切っても切れない関係にあります。
イタリアの彫刻とファッション誌の影響
荒木先生はイタリアのルネサンス彫刻、特にミケランジェロなどの作品から、肉体のねじれや美しさを学んでいます。さらに、VOGUEといったハイファッション誌のモデルのポーズからもインスピレーションを受けています。
彫刻的な立体感を作るには、強い「光と影」が必要です。ジョジョの絵において、色はあくまでその影を引き立たせたり、肉体のラインを強調したりするための補佐役でもあります。
派手なポーズに、さらに現実離れした鮮やかな色彩が加わることで、漫画という枠を超えた「一枚の絵画」としての強烈なインパクトが生まれます。だからこそ、ジョジョのイラストはルーヴル美術館に展示されるほどの芸術性を認められたのです。
グッズやフィギュアで楽しむ「自分だけのジョジョ」
ジョジョのファンにとって、グッズ選びは他の作品よりも自由度が高いのが特徴です。
フィギュアのカラーバリエーション
例えば、人気のフィギュアシリーズである超像可動を見てみましょう。同じキャラクターでも、再販やバリエーション展開によって驚くほど色が違います。
ある人は「承太郎はやっぱり黒の学ランが落ち着く」と言い、ある人は「いや、荒木先生の画集で見た紫の承太郎こそ至高だ」と言います。どちらも間違いではありません。
自分が一番「そのキャラクターの魂を感じる色」を選べる。これは、色が固定されていないジョジョだからこそ味わえる、ファンならではの贅沢な悩みなんです。
画集で読み解く色彩の進化
荒木先生の画集、例えばJOJO A-GO!GO!やJOJOVELLERを開くと、時代とともに色彩感覚が進化しているのが分かります。
初期は比較的はっきりとした原色が多かったのですが、次第に中間色や淡いパステルカラーを組み合わせた、より複雑で深みのある色使いへと変化しています。色を「塗る」というより、キャンバスの上で「光を操っている」ような感覚に近いかもしれません。
日常生活に潜む「ジョジョの色」を探してみよう
ジョジョの色彩感覚に慣れてくると、日常の景色も少し違って見えてきます。
夕暮れ時の空が不気味な紫色に見えた時、あるいは街中の看板の色の組み合わせが妙に鮮やかだった時、「あ、これジョジョっぽいな」と感じたことはありませんか?
補色の関係が生むインパクト
荒木先生の絵がなぜあんなに目に飛び込んでくるのか。その秘密の一つに「補色(ほしょく)」の活用があります。
補色とは、色相環で反対側に位置する色のこと。例えば「黄色と紫」や「赤と緑」などです。これらを隣り合わせにすると、お互いの色が引き立ち、非常に強いインパクトを与えます。
ジョジョのキャラクターデザインやカラー原稿では、この補色が計算し尽くされて配置されています。派手なのに品がある、あるいは毒々しいのに美しい。そんな矛盾した魅力を生み出しているのは、この徹底した色彩のコントロールなのです。
ファッションへの応用
ジョジョの色の組み合わせは、実はファッションの参考にもなります。普通なら「その色の組み合わせは派手すぎるだろう」と思うような配色も、ジョジョのフィルターを通すと不思議とおしゃれに見えてくるから不思議です。
ジョジョ ネクタイなどのアパレルアイテムも人気ですが、それらを身につける時は、ぜひ「ジョジョ的な色彩」を意識してみてください。単なるキャラクターグッズとしてではなく、一つのデザインとして完成されていることに気づくはずです。
ジョジョの色を知ることで広がる冒険の楽しみ
さて、ここまでジョジョの色彩について語ってきましたが、いかがでしたでしょうか。
「決まった色がない」ということは、読者である私たち一人ひとりの想像力に、作品の完成が委ねられているということでもあります。モノクロの誌面を読んでいる時、あなたの頭の中では何色の承太郎が動いていますか?
読者の数だけ「正解の色」がある
もしあなたが「ジョジョの色についてもっと深く知りたい」と思ったら、ぜひ一度、真っさらな気持ちでカラー画集を眺めてみてください。そこには、決まったルールのない、無限に広がる自由な世界が広がっています。
荒木先生が描く色は、キャラクターの叫びであり、魂の輝きです。それに正解も不正解もありません。あなたが感じたその色こそが、その瞬間のジョジョの真実なのです。
ジョジョの色はこれからも進化し続ける
物語が第1部から第9部へと引き継がれていく中で、絵柄とともに色彩もまた、常に新しい挑戦を続けています。時代が変わっても、ジョジョが「古臭くならない」のは、このように固定観念を打ち破り続ける色彩感覚があるからに他なりません。
次に新刊を手に取る時、あるいはアニメのスイッチを入れる時、ぜひ「色の変化」に注目してみてください。そこには、言葉以上のメッセージが込められているはずです。
「ジョジョの色」という終わりのない冒険。あなたもその鮮やかな世界の一部に、どっぷりと浸かってみませんか?
最後に:ジョジョの色が教えてくれること
『ジョジョの奇妙な冒険』の色彩は、私たちに「常識に縛られない自由さ」を教えてくれます。
空が青くなくてもいい。服の色が毎回変わってもいい。大切なのは、その時自分が何を表現したいのか、何を感じているのかという情熱です。そんな荒木飛呂彦先生のスピリットが、あのカラフルで奇妙な世界を作り上げているのです。
これからも、変幻自在に形と色を変えながら、ジョジョは私たちを驚かせ続けてくれるでしょう。さあ、あなたも自分だけの「ジョジョの色」を見つけに、再びあの数奇な運命の物語へと足を踏み入れてみてください。
きっと、今まで見落としていた鮮やかな「真実」が、そこには待っているはずです。

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