『ジョジョの奇妙な冒険 第7部 スティール・ボール・ラン(SBR)』を読み終えたあと、私たちの目に映る「世界」は少し違って見えませんか?道端に咲く花、ふと見上げた夜空の星、あるいはコーヒーカップの中に広がる渦巻き。それらすべてに「ある法則」が隠れているのではないか……そんな奇妙な高揚感を与えてくれるのが、作中の重要なキーワードである**「黄金比」**です。
ジャイロ・ツェペリがジョニィに伝えた「技術」を超えた教え。なぜ長方形から無限のエネルギーが生まれるのか?今回は、物語の根幹をなす「黄金比」と「黄金長方形」、そして「無限の回転」の仕組みについて、現実の数学や芸術の視点を交えながら徹底的に紐解いていきます。
黄金比という「宇宙の共通言語」
そもそも黄金比とは何でしょうか?数学的に言えば、およそ $1 : 1.618$ という比率のことです。数字だけ聞くと味気なく感じるかもしれませんが、これは人間が本能的に「美しい」「調和している」と感じてしまう魔法の数字なんです。
古代ギリシャのパルテノン神殿から、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画、さらには現代のiPhoneのデザインに至るまで、この比率はあらゆる場所に潜んでいます。ジョジョの世界において、ジャイロがこの比率を「回転」に取り入れたのは、それが単なる美しさの基準ではなく、自然界の「真理」に直結しているからに他なりません。
この比率を持つ「黄金長方形」から正方形を切り取ると、残った部分にまた小さな黄金長方形が現れます。これを無限に繰り返して角を曲線で結んでいくと、中心に向かって永遠に続く「黄金螺旋」が描き出されます。この「終わりのない構造」こそが、ジョニィが求めた「無限の力」の設計図となったのです。
自然界に隠された「見本」を探せ
作中で印象的なのは、ジャイロが戦闘の最中に「自然界にある黄金比」を探すシーンです。なぜわざわざそんなことをするのか?それは、人間が頭の中で描くイメージには必ず「狂い」が生じるからです。
極限状態の戦いの中で、完璧な回転を生み出すためには、自分勝手な想像ではなく、宇宙が作り出した本物の「型」をカンニングする必要がありました。
- 雪の結晶の形
- 蝶の羽の模様
- ひまわりの種の並び
- 木の枝の分かれ方
これらはすべて、フィボナッチ数列という数学的な規則に基づいています。フィボナッチ数列とは、前の2つの数字を足していく数列(1, 1, 2, 3, 5, 8, 13…)のことで、数字が大きくなるほどその比率は黄金比へと近づいていきます。
ジャイロがジョニィに教えたのは、単なる投球術ではありません。目の前の過酷な現実に絶望するのではなく、世界に満ちている「調和」に意識を向け、そのエネルギーを自分の味方につけるという精神性だったのです。
馬の走りと黄金長方形の融合
物語のクライマックスで重要になるのが、馬の力を借りた「究極の回転」です。なぜ自分の腕を回すだけでは不十分だったのでしょうか。
それは、人間一人の筋力や精神力では、宇宙のエネルギーである「無限」を支えきれないからです。そこで必要になったのが、太古から人間と共に歩んできた「馬」の生命力でした。
馬が最も自然な歩調で走る際、その脚の動きや筋肉の連動は、地面に「黄金長方形」を描き出します。騎手はそのリズムに自らの回転を同期させることで、初めて自力では到達できない領域のパワーを引き出すことができるのです。
これは、テクノロジーの進化に頼り切るのではなく、自然の摂理を敬い、それと一体化することで限界を突破するという、SBRという作品が持つ深いテーマを象徴しています。
無限の回転(タスクACT4)が破壊するもの
ジョニィ・ジョースターが最終的に辿り着いた「タスクACT4」。このスタンドが放つ「無限の回転」は、もはや物理的な破壊力だけではありません。それは「次元の壁」すら無効化する力を持っていました。
大統領の能力である「D4C ラブトレイン」は、あらゆる不幸を他所へ弾き飛ばす「絶対的な守り」でした。しかし、黄金比に基づいた無限の回転は、一箇所に留まることがありません。常に変化し、収束しながら広がり続けるそのエネルギーは、閉ざされた次元の隙間をこじ開け、どこまでも追いかけていく。
「もし君の足が動かないのなら、それは君の心が止まっているからだ」というメッセージが、黄金比という「永遠に動き続ける図形」を通して具現化された瞬間でした。
現代を生きる私たちが学べること
私たちはジャイロのように鉄球を投げることはできませんし、ジョニィのようにスタンドを操ることもできません。ですが、彼らが教えてくれた「黄金比の視点」は、私たちの日常を豊かにするヒントに溢れています。
例えば、仕事で行き詰まったときや、人間関係で悩んでいるとき。自分の狭い視点だけで解決しようとすると、回転はすぐに止まってしまいます。そんなとき、ふと深呼吸をして、自然のサイクルや、自分を取り巻く大きな流れ(黄金比)に目を向けてみる。
「一番の近道は遠回りだった」「遠回りこそが最短の道だった」
この言葉通り、目先の利益や効率だけを求めるのではなく、一見無駄に見えるプロセスや、自然なリズムを大切にすることが、結果として自分を一番遠くまで運んでくれる「回転」を生むのかもしれません。
ジョジョ第7部の黄金比とは?黄金長方形と無限の回転の仕組みを徹底解説!
さて、ここまで『スティール・ボール・ラン』における「黄金比」の深淵について触れてきました。
黄金比とは、単なる算数の問題ではなく、荒木飛呂彦先生が描こうとした「受け継がれる意志」や「再生」のメタファーでもあります。ジョニィが漆黒の殺意を超えて、馬の走るリズムの中に世界の美しさを見出したとき、彼の魂は救済されました。
私たちがジョジョの奇妙な冒険 第7部を読み返すたびに新しい発見があるのは、物語そのものが黄金螺旋のように、中心に向かって深化し続けているからかもしれません。
次にあなたがひまわりを見たり、貝殻を拾ったりしたとき、そこにある「1 : 1.618」を感じてみてください。きっと、ジャイロの不敵な笑みと、ジョニィの力強い眼差しが、あなたの心の中で回転し始めるはずです。

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