「仕事中の怪我で休んでいるけれど、いつまで補償は続くんだろう……」
「会社から『そろそろ打ち切りだ』と言われたけれど、まだ体が動かない。どうすればいい?」
労災で休業しているとき、一番の不安は「お金」と「いつまで守ってもらえるか」ですよね。毎日リハビリに励んでいる最中に、追い打ちをかけるような打ち切りの話が出ると、目の前が真っ暗になってしまうかもしれません。
でも、安心してください。労災の休業補償には、実は「〇ヶ月で終わり」といった一律の期限はありません。
この記事では、休業補償が打ち切られる本当のタイミングや、打ち切りを宣告されたときに取れる対策、そしてその後の生活を守るための具体的な方法を詳しくお伝えします。
労災の休業補償に「いつまで」という期限はない
まず最初に知っておいてほしいのは、労災保険の休業(補償)等給付には、法律で決まった「最長期間」は存在しないということです。
以下の3つの条件を満たしている限り、基本的には支給が継続されます。
- 業務上の怪我や病気で療養(治療)していること
- その療養のために働くことができない状態であること
- 働けないために賃金(給料)を受けていないこと
「1年経ったら自動的に終わる」といったネットの噂を耳にすることもありますが、それは間違いです。数年にわたって受給し続けている方も実際にいらっしゃいます。では、なぜ「打ち切り」という言葉が飛び交うのでしょうか。それは、支給が終わる「節目」がいくつか存在するからです。
休業補償が打ち切られる3つの主な理由
休業補償が止まってしまうのには、明確な理由があります。多くの場合、以下の3つのいずれかに該当したときです。
1. 「治癒(症状固定)」と判断されたとき
これが打ち切りの理由で最も多いものです。労災でいう「治癒」とは、傷が完全に治って元通りになることだけを指すのではありません。
「医学上これ以上の治療を続けても、症状の劇的な改善が見込めない状態」も治癒(症状固定)とみなされます。この判断が下されると、「これ以上休んで治療する必要はない」とみなされ、休業補償はストップします。
2. 療養開始から1年6ヶ月が経過したとき
怪我をしてから1年6ヶ月が経過しても治っていない場合、労働基準監督署が「その傷病の状態が重いかどうか」を確認します。
もし傷病等級(1級〜3級)に該当するほど重い状態であれば、休業補償から「傷病(補償)年金」という別の給付に切り替わります。名前は変わりますが、補償自体は継続されるので、これはいわゆる「悪い打ち切り」ではありません。
3. 会社が「打切補償」を支払ったとき
療養開始から3年が経過しても治らない場合、会社側が平均賃金の1,200日分を一括で支払うことで、その後の補償義務を免れる制度があります(労働基準法81条)。
これを支払うと、会社は「解雇制限」から解放されます。ただし、これはあくまで会社と労働者の関係の話。国が支払う労災保険の給付がすぐに止まるわけではないので、混同しないように注意が必要です。
「まだ働けないのに打ち切り」と言われた時の対策
「医師や労基署から打ち切りを打診されたけれど、とてもじゃないが仕事に戻れる状態じゃない」という場合、ただ黙って受け入れる必要はありません。
主治医と徹底的に話し合う
打ち切りの判断において、最も重要なのは医師の診断書です。
もし「まだ治療が必要だ」と感じているなら、主治医に自分の体の状態を具体的に伝えましょう。「朝起きた時にこれくらいの痛みがある」「この動作をすると激痛が走る」など、仕事に復帰できない理由を医学的な視点で説明してもらうことが大切です。
場合によっては、他の専門医にセカンドオピニオンを求めるのも一つの手です。
労働基準監督署に不服を申し立てる
もし「支給停止」の決定通知が届いてしまったら、その決定を知った日の翌日から3ヶ月以内に「審査請求」という手続きができます。
これは、「その決定は納得いかないので、もう一度調べ直してください」と申し立てる制度です。個人でやるのは少しハードルが高いですが、弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談しながら進めるのが現実的です。
打ち切り後の生活はどうなる?知っておくべき切り替え先
万が一、休業補償が打ち切られてしまったとしても、すぐに収入がゼロになるとは限りません。次のステップを確認しましょう。
障害(補償)給付への切り替え
「症状固定(治癒)」と判断された後に体に障害が残ってしまった場合は、障害等級に応じて年金や一時金を受け取ることができます。
休業補償は「治療中のための補償」ですが、障害補償は「残ってしまった不自由さに対する補償」です。打ち切りのタイミングで、この申請を忘れないようにしてください。
傷病手当金は使えるのか?
ここで注意したいのが、健康保険の「傷病手当金」です。
通常、プライベートの怪我で休むともらえる手当金ですが、労災で「症状固定」とされた同じ怪我については、原則として傷病手当金をもらうことはできません。理由は「治療の必要がない(固定した)」と判断されているからです。
もし別の病気や怪我が原因で働けないのであれば対象になりますが、労災の延長線上として傷病手当金をあてにするのは危険です。
会社から解雇されるリスクについて
休業補償が打ち切られる話が出ると、同時に「クビになるんじゃないか」という不安がよぎりますよね。
法律では、労災で休んでいる期間とその後30日間は、会社は労働者を解雇できないと決まっています。
ただし、先ほどお伝えした「打切補償(1,200日分)」を会社が支払った場合や、怪我から3年経っても治らず、傷病年金を受けている場合などは、この解雇制限が解除されます。
もし会社から無理やり退職を迫られたり、不当な解雇を告げられたりした場合は、労働法 専門書などで知識を補いながら、早めに労働局や弁護士に相談することをおすすめします。
最後に:不安を解消するために今できること
怪我の痛みだけでも辛いのに、将来のお金の心配まで重なるのは本当にしんどいことです。
まずは、自分の現在の状況が「治療中」なのか「症状固定(これ以上良くならない)」なのか、主治医の見解をしっかり確認してください。もし「打ち切り」という言葉が出ても、慌てて判を押す必要はありません。
労災制度は、働くあなたを守るためのものです。制度を正しく理解し、必要なときには専門家の力を借りて、一歩ずつ進んでいきましょう。
今の状態を記録するために日記帳やメモアプリを活用して、日々の痛みの変化やリハビリの内容を記録しておくと、後の審査請求や医師への説明にとても役立ちますよ。
焦らず、まずはしっかりと体を休めることを最優先にしてくださいね。
労災の休業補償が打ち切られる期間は?理由と対策、終了後の対応を専門家が解説しました。あなたの不安が少しでも軽くなることを願っています。

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